ヘヴィメタルの再発CDではスリップケースに収納されたものが頻繁に見られますが（パンクのCDでは滅多にない）、これは多種多様に次々とリリースされる限定仕様や各国盤の中に埋もれてしまわないよう差別化を狙った、全世界をマーケットとするヘヴィメタルならではの特性かと思います。このたび、スリップケース付きのブラジル盤最新または近年バージョン各種がBOYの網にも引っかかりましたので、この機会に、普段は入荷させようかどうしようか躊躇しがちな正統派系を中心にチラホラ入れてみました。

こちらは当時から良くも悪くもアメリカン・マイナー・メタルを代表するような作品として日本でも扱われてきたOMENの1984年1stアルバムの、Nuclear Musicなるレーベルからリリースされた2020年バージョンです。スリップケースがエンボス加工、ジュエルケースに被せるのかスリップケースに被せるのかよくわからなくて悩ましい帯、ポスター付きのデラックスなライセンス盤で、ブックレットの中身もかなり良く、素晴らしい出来です。Metal Massacre V提供曲と、1986年ライブをボーナス収録した全12曲入りなんですが、これがアナログ盤に置き換えるとA面のケツとB面のケツ部分にボーナス曲を配置するという、CDリスナーにはどーでもいいこだわりっぷり！！

SAVAGE GRACEの1983年1st 12" The Dominatressでギターを弾いていたKenny Powell氏が、SAVAGE GRACE脱退後に結成。SAVAGE GRACEの最大の魅力であるガッツ・パワーとメロディーのうち、哀愁メロディーの要素をKenny Powell氏もかなりの部分で担っていたのか、このOMENのBattle Cryアルバムは、まるでSAVAGE GRACEのThe Dominatress 12"の完成形のような、LAメタルでありながら、大英帝国産鋼鉄の叙情にも劣らない絶品の号泣アメリカン・エピック・パワー・メタル大名盤です。これはやはりシンガーの故J.D. Kimball氏の曇った素晴らしい哀愁ボイスが大きく作用していて、Kenny Powell氏が初期SAVAGE GRACEで試みていたエピック・パワー・メタルが、このOMENの1stアルバムで遂に完璧な形となって花開いたような作品となっています。

(Nov.16.2012)

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